文系の編入学試験は高専生に不利

はじめに

 理系学部においては「編入学は高専出身者が利用するもの」という認識が根強く、現実、理系学部へ編入する学生の大半が高専生です。しかし、文系学部は状況が異なります。この点に潜む問題点について、注意喚起をしておきます。

 

編入学制度の現実

 文系学部の編入学試験においては「高専・短期大学・専修学校の出身者」は殆ど存在せず、「大学生」が大半を占めています。そして、特に多いのが「法学部から法学部」や「経済学部から経済学部」への編入学を狙う大学生です。そして、彼らの多くは「大学受験のリベンジを狙う大学生」でもあります(※私は大学受験のリベンジを狙うことが悪いとは考えていません)。

 編入対策に特化した「編入学予備校」も存在します。そして、編入学予備校の公式サイトを見ると「2科目で受験でき、一般入試時の偏差値では決して受からなかった大学にも合格の可能牲がある」「一般入試ではとても入れないような難関大学でも、勉強の仕方によっては入れる可能性が出てきます」といった文言が踊り、「大学受験のリベンジを狙う大学生」を惹きつけています。

 編入学試験の過去問を蓄えている高専は多いと思いますが、文系編入の過去問までは蓄えていないと思います。そして、各大学は過去問を数年分しか公開しておらず、文系編入の過去問を独占的に握っているのは「編入学予備校」です。

 

高専生に不利である理由

 以上で述べた文系編入の実態は何を意味するのでしょうか。

①小論文試験

 まず、小論文試験において高専生は不利です。法律の素養を一切持たない高専生が、「法学部から法学部への編入学を希望する」大学生よりも不利であることは容易に想像できると思います。小論文試験は基本的に「考えたことを書けば良い」試験ですが、法律的な角度から思考ができることが不利になることは有り得ません。高専生が無意識のうちに法学部の教授が嫌うような考え方(レイシズム全体主義的な思想が見え隠れする)に基づく論述をしてしまう可能性は十分にあります。

②英語試験

 英語試験に関しても高専生は不利です。大抵の高専生は英語に弱いですから(自分もTOEIC初受験時は目も当てられない点数でした)。小論文と異なり、英語ができないのは高専生の自業自得なので文句を言えた立場ではありませんが、大学受験に備えて高校3年間を受験対策に費やした大学生の英語力は相当なものです。

③制度的弊害

 小論文試験と英語試験における不利は努力次第で挽回可能なものです。しかし、どうにも覆せないのが、「受験に落ちた高専生には留年するか既卒になるかの道しか残されていない」ことです。高専にある程度のノウハウが蓄積されている理系編入と異なり、不確定要素の多い文系編入は賭けの要素が多いです(運の要素が非常に大きいです)。

 過去問の蓄積も高専にはないと思います。そして、過去問を獲得する方法は、①大学を直接訪問する、②インターネット公開されているものを利用する、③編入学予備校から獲得する、の3種類だけです。過去問の模範解答までをも得られるのは③だけであり、①・②では著作権の関係で問題文が塗りつぶされていることさえ多々あります(予備校の過去問はその年の予備校生が受験時の問題を持ち帰ったものなので黒塗りはありません)。

 

さいごに

 私も同級生を見てきたので、理系編入が各高専のトップクラスの学生同士で潰しあう過酷な戦いであることは知っています。この点においては、文系編入は「楽」だと思います。ただし、「楽」である代わりに「運」の要素が非常に大きくなります。そして、「運」を補うためには行動が必要です。予備校から過去問を得るにせよ、各大学を直接訪問するにせよ、高専からの支援は何も望めないので自分で情報を能動的に収集しなければならないということだけは認識しておいて下さい。